fc2ブログ

面白い本は・・・

本の話し
07 /11 2011
最近思うんですけどね、運動不足気味なので身体を動かしたいのですが、今外に出て運動してたら多分倒れそうなので、部屋で自転車でも漕いでいたいなぁ、と。
で、その自転車マシーンで発電出来ないかと。あれってどのくらいの速度、時間で、どれほどの電力が蓄えられるんでしょうね。運動しつつ自家発電したいなぁ。

さてさて久しぶりの本の話し。
今日は4月に発売されたこちらです。

ロン・ウィルソン プロフェッショナルマジック

リチャード・カウフマン(著) 角矢幸繁(訳)/ 東京堂出版


4月発売からまだ3カ月くらいしか経っていませんが、何となく半年以上前に買って読んでいるような気がしている本であります。
面白い本とか好きな本てのは他に比べて読む時間が長くなるので、感覚的に「沢山読んでいる=結構前から読んでいる=結構前に発売された本」みたいに思うんでしょうね。
まぁ、ほんとなら発売直後に記事にしたほうが時期的にも丁度よいのでしょうけど、僕の場合はそれだと目次みたいなレビューに一口感想で終わり、ってなっちゃいそうですから、本来なら全ての本はこれくらい読んでから感想を書いた方が良いのだと思っています。

この本はカウフマンの「The Uncanny Scot」(1987)の完訳本です。
発売予定を見てからちょっと調べて「Tales from the Uncanny Scot」(2010)という本も最近出ていたのを知り、こちらも読んでみたい内容だなと思いました。

本書に解説されているトリックは20とちょっとなのですが、ページ数は230以上です。一つの解説がとっても行き届いています。
トリックの現象に新鮮で目新しいものはありません。例えばカードなら「財布に通うカード」や「ミクロ・マクロ」、「アウト・オブ・ディス・ワールド」。他の素材を使ったものだと「チョップカップのルーティン」や「シルクの色変わり」、「リング・フライ」、「復活する新聞紙」などです。
どれもスタンダードな演目で奇抜な改案などではありません。至ってスマートで素直なレシピです(つまるところ、これらは何十年も使うプロのレパートリーになり得る演目、ということなのでしょう)。

一流のプロが何十年と演じてきたトリックの解説は知識と経験による工夫の宝庫です。身体の動きや視線、台詞とのタイミング、アクシデントへの対応方法など、何だかこんなに教えてもらっちゃってゴメンナサイな気持になるくらい。
例えば「アル・コーランの飛行する指輪の考察」ではリングフライの解説がされています。現象自体は至ってノーマルなものですから、ここで教えてもらえるのはリングフライの解説ではなくて、「ロン・ウィルソンがリングフライをどう演じているか」という事なんですね。
手の動きや目線、それから「ちょっとした工夫」(これが嬉しい!)を教えてもらえます。
彼の行っているような工夫を僕はこれまで知りませんでしたし、それ以外の、指輪を消す前段階の部分もとても参考になります。そして洒落の効いた台詞もまた美味しい。

まずページを捲ると「日本語版に寄せて」「まえがき」「スコットの人生」「イントロダクション」と続き、最初のトリックの解説に入りますが、トリックの解説に至るまで23ページを費やしています。
細かく言うとイントロダクションでも、解説というかトリックの紹介はされているのですが、どちらかというと「まずロン・ウィルソンはどういう人か知っておいてね」という目的を感じさせるような文章かなぁ。
このイントロダクションは本当に良い。
もしここを読み飛ばしてトリックの解説までページを早送りしたとすれば、この本の魅力を(当人が十分に感じていると思っていたとしても)完全に味わえていないと僕は思います。
そして最初のトリックの解説は「ハイランド・ホップ」、思わずニヤッとしちゃいます。心をギュッと掴まれた気がしました。

また、トリックの解説の合間にあるちょっとした体験談もなかなか面白く、お仕事での事、キャッスルでの事などがビッグネームらを交えて語られています。TVに出演した際の失敗談などは、今やあり得ない事ではあるけれど、なるほどな、と思います。

ここが凄く良いな、と思った点は、写真です。
ロン・ウィルソンご本人の写真が解説でも使われているのですが、上半身が全て写っている写真が多く、上半身の向きや顔、表情がはっきりと分かります。
これはなかなか良いですね。例えば解説文とリンクして写真を見ていくと、彼が殆ど手元のデックを見ずに観客の方を向いているシーンがあります。他にはカードを示す位置が、顔の下、胸の前と、結構高めだという事も分かります(最近は「見下ろし型」が多いですよね)。
こういう点は実演するうちに修正するのですが、こうやって御手本を綺麗な写真で見る事が出来る点は素晴らしいと思います。

翻訳文について。
最初のイントロダクションにあるカウフマンとの対談シーンなどすらすらと読んでいるけれど、ちょっと古い翻訳本だと何を意味しているのか少し悩むような文章が少なくないですから、非常に読みやすく、痒いところに手が届いているのだと思います。英語のジョークは日本語だと丁寧に訳しても全然面白みが分からない事がありますが、そういう部分のフォローもきちんとしていますから、そういう所から自分なりの台詞を作る切っ掛けにもなりますね。

最後に、翻訳は角矢さんが担当されておりますが、この本については「覚え書き」として追加の情報を読む事が出来ます。
角矢さんのブログ「Better Late Than Never」の4月15日の記事から読む事が出来ます。
是非どうぞ。

大変おススメの一冊。でも最新のトリックをバリバリ覚えたい!という人は、ちょっと落ち着いてから読んでみると良いと思います。ちなみに角矢さんの次の本はジェイ・サンキー本だそうです。
サンキー、サンキー、いっぱい作品を出している人なんですけど、エアタイトしか思い出せない・・・うーん。

コメント

非公開コメント

あすぱら

トマト・お酒・カードマジック好き。
最近はレザーアイテムをチマチマ作っております。