ミステリーとマジックってとても似ていると思う。
というのは以前「容疑者Xの献身」の紹介でも書いた通り。
欧米のミステリーと日本のミステリーは雰囲気が違う。
そりゃ言語が違うのだから、というのもあるけれど、日本の場合は最後に感動できるか、若しくは重い話でちょっぴち切ない気分になるか、のどちらかが多い。
トリックの「タネ」は勿論明かすのだが、それに関わった人々から何かしらのメッセージが読者に送られてくる。
欧米のミステリーは、大胆だったり非常に巧妙だったり馬鹿らしいくらいに単純だったりするトリックをバーンと明かしてスパーンと終わるような感じ。
「タネ」を明かすことで読者をハッっとさせる。これが一番重要に描かれている。
メッセージ色があまり濃くないと僕は思っている。
だから手軽に「面白い」と感じながら読める。
ミステリー好きの僕が今までに読んだミステリーでTOP10を作るならきっとコレは入る。
「ミステリーの女王」といえばわかる人多いですよね。Agatha Christieの
「そして誰もいなくなった」です。
ある孤島に招かれたお互いに全く接点の無い人々。
彼らはその島でオーウェンと名乗る謎の人物からそれぞれが犯した「罪」を咎められます。
そして島に閉じ込められた彼らは一人ずつ死んでいくのです。
数日後警察がその島で見たものは彼らの遺体だけで生存者は存在しませんでした。
彼らは全員が「殺されている」にも関わらず生存者はゼロ。
最後に残ったのは誰か。そして何処に消えてしまったのか。
というミステリー。
これは読みながら謎を解いていける類のミステリーではありません。
ドキドキしながら事の成り行きを見守るように読み進む事ができます。
一人ずついつの間にか殺されていってしまう様子はかなり怖いものがありますね。
このミステリーはマジックそのものです。
一見不可能な現象が起こってしまう。観る人読む人は頭の中で色々なことを考えます。
どう考えてみても不可能です。そうした「不思議を吟味する」楽しさを持っているのです。
このミステリーはストーリーの中で解決されません。
一番最後、犯人によって書かれた「犯行の告白文」が書かれています。
どのようにしてこの不可能な現象を起こしたのか明かされるわけですが、僕は最後のこれを読んでしまった後かなり後悔しました。
限りなく不可能。でも実際にそれをやってみせた。そしてその現象を可能にするタネが存在している。これらの点が分かっていれば最後の種明かしは必要なかったと思います。
タネは存在する、という前提のもと、何かしらの方法で起こしてみせるのは可能である。だから何度もそのトリックを考えてみる。
そういった楽しさは、種明かしによって一瞬で壊されます。
最後まで謎のまま、というマジックの理想はミステリーでは使えないのでしょうね。

今読んでいるのは「ハロウィーン・パーティ」